SailerインタビューVol.30
(上の写真は、スペシャルオリンピックス世界大会・アブダビにて)
ホームステイ体験が人生に大きな影響を
皆木さん(60代)新潟県
楽しいから夢中になれる!?
大学卒業後、出身地の新潟にUターンして地元の企業に就職。一時期、輸出関係の業務に携わっていたこともありますが、概ね人事部で大学生や高校生の採用を担当していました。
60歳で定年を迎えたとき、ボランティア活動や長期の海外旅行など、やりたいことが多々あったので仕事はすっぱり辞めました。
昔から語学は得意なほうで、英会話も海外を旅することも好きでした。大学に入ってからも英会話スクールに通っていましたし、4年生のときはホームステイでロサンゼルスに1カ月くらい滞在。卒業旅行ではアメリカに一人旅するなど、充実した日々を送っていました。
社会人になってからも、趣味のスキューバダイビングなどで、パラオ、モルジブ、タヒチ、ガラパゴス諸島など20数か国、70~80回は海外に行っていると思います。
現在も年に4~5回、スキューバダイビングを楽しんでいます。コロナ禍になってからは沖縄や小笠原など国内ばかりなので、そろそろ海外に行きたいと予定を立てているところです。
Sailに参加したきっかけは2年前、コロナが始まった頃に日経ビジネスで関連記事を読んだことです。ちょうど会社を辞めた時期でもあり、外出もままならない上、自由になる時間が沢山ありました。スポーツクラブに通ったりしていましたが、ほかにも何かしたいと思っていた矢先のこと。ちょっと調べてみて、これなら自分でもできそうだと思ったのでエントリーしました。
前職で採用担当者として遠方の学生たちを選考するため、頻繁にWeb面談など行っていましたからね、若い人たちとの交流には慣れていたのでスムーズにスタートできました。何よりも色々な国の人たちと気軽に交流できることがとても楽しく、うれしかったです。
趣味にしてもボランティアにしても、渋々やっていたら意味がないし続かないですよね。やっぱり楽しいから夢中になれるのだと思います。
背中を押して少しでも勇気を与えられたら
今は週に3~4回Sailで会話を楽しんでいるほか、「ネイティブキャンプ」というオンラインでの英会話レッスンを利用しています。こんな風に英語と日本語で海外の方と交流する、ということをほぼ毎日やっているわけです。
Sailの参加者は大きく分けると①リタイア、もしくはセミリタイアした50~60才以上の方、②30~40代の主に技術者の方、③将来、日本で働きたいから日本語の勉強を始めたという若年層、この3パターンがあると思います。
中でも特に応援してあげたいのは、日本語の勉強を始めて半年~1年くらい、いつか日本で働きたいと希望を持って頑張っている方々です。
皆さんの不安が少しでも解消されることを願いながら、困っていることや不安に思っていることを訊いたり、日本に来ればこんなに楽しいことがあるってことを伝えたり……。とにかく不安を取り除いてあげたいという思いがいちばん大きいですね。
これはSailに限らず、どこの国のどんな境遇の人に対しても思っていることです。交流していく中で、できるだけ相手の気持ちに寄り添って、励ましたり勇気づけたりしたいと。それを使命のように感じているところもあります。
実は私、新潟の小学生と海外の子どもたちが国際交流を図る「はばたけ21 未来の子どもたちへ」という事業に25年間くらいボランティアで携わっていたことがあります。この事業は、中国・ロシア・韓国など世界各国の子どもたちが日本の小学生と一緒に過ごし、キャンプやスポーツ、ホームステイなどを通じて国際感覚を養ったり、それぞれの国の歴史や文化に対する理解を深め、親善を図ることを目的としています。
そして、もう一つ。知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングと競技会を提供している「スペシャルオリンピックス」という国際的なスポーツ組織があるのですが、こちらのボランティアにも20年くらい関わっています。
私は新潟県の理事で、陸上のコーチやローカルトレーナーも務め、2019年にアブダビで開催された「スペシャルオリンピックス夏季世界大会」にも同行しました。
こうしたボランティア活動を通じて、多くの海外の方々と接してきたわけですが、あるとき円滑な交流を図る上で心得ておきたい大切なことに気づきました。
それは、シンプルでわかりやすい単語を使って、一つの情報をなるべく短いセンテンスにして話さないと彼らに伝わらないということです。
ですからSailで日本語のビギナーの方とお話するときなどは、あのときに学んだ「シンプルに、センテンスを短く」ということを心がけています。
大学時代のホームステイ体験に影響を受けて
人は誰かに背中を押してもらって一人立ちできるようになったら、いつまでも一緒にいてもらわなくても大丈夫でしょう。でも、手を差し伸べてあげなければ一人では歩き出せないという人も沢山いらっしゃいます。だから、困っている人には、そっと背中を押して、少しでも勇気を与えられたらと思うんです。
こうした思いは、もともと根底にあったと思いますが、ボランティア活動を続けていく中で新たに芽生え、自分の中で少しずつ育っていったように思います。
それと、ボランティアに参加している人たちが素晴らしい方ばかりなので、皆さんの影響を受けながら、自分の思いが確立していったのだと感じています。
でも、結局のところ「スペシャルオリンピックス」も「はばたけ21未来の子どもたち」も「Sail」も、何といっても自分自身が楽しいからやっているのだと思います。楽しくなければ、のめり込むことはできませんからね。
S.I.M Sailerという協賛メンバーシップに登録したのは、無料でこのグローバルなサービスを利用させていただくのは居心地が悪い、といった思いが先ず、あったんですね。それと、新たな事業チャレンジや、収益の一部が世界の語学学校などに寄付されるとのことでしたので、少額ながら貢献したいと思ったからです。でも、無料で利用するのは、ちょっと居心地が悪かったという思いが大分、大きいと思います。
なんだかんだ言っても海外の方と交流することがすごく好きなので、Sailでは日々楽しくお話させていただいています。
ここ2年くらいはコロナ禍で全く海外に行けなかったので、皆さんとの交流によって、世界の国々に思いを馳せながら旅気分だけ味わっていました。それによって気が紛らわせるかと思いきや、Sailを始めてから「海外に行きたい!」という欲求がより強くなってしまいました。
今は、できるだけ近いうちに海外旅行を実現させたいと思っています。それと、これは勝手に思い描いている夢ですが、Sailやネイティブキャンプで知り合った皆さんとも、いつかお会いできたらうれしいですね。
冒頭で、大学時代にホームステイした話をしましたが、そのときに思ったんですよ。私たちを引き受けてくださったホストファミリーの皆さんは、なんでこんなに親切にしてくれるんだろうと。もう言葉にできないほど感謝の気持ちでいっぱいになりました。
食事の準備はもちろん、パーティを開いてくれたり、ディズニーランドやユニバーサルスタジオに連れてってくれたり……。心のこもった歓待をしてくれたことが本当にうれしくて、ありがたかったです。同時に、これだけ恩を受けたのだから、自分もいつかどこかでお返ししていきたいと思い続けてきました。
無償で親切にしていただいた、あのときの感謝の思いが、私のその後の生き方やボランティア活動に影響を与えていることは間違いありません。
(聞き手・ライター 松井 京子)
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