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2022 Jan 07
Sailer Interviews

SailerインタビューVol.25

少しでも日本語力アップに協力できたら

吉田さん 大阪府

日本語を学びたい方々と直接触れ合いたい

通信会社オプテージの「sailモニター募集」を見て申し込みました。
以前、私が日本語教師をしていた頃は、学生は中国、韓国の方がほとんどで、時々アメリカの方がいる感じでした。ですが7〜8年前くらいからは日本語を学ぼうという方々の国が、技能実習や介護などの仕事で来日を予定する東南アジアの国々へと様変わりしました。今私は、日本語教師養成の仕事をしているため、直接外国人学習者とお話しする機会がありません。だからSailを通じて「今、日本語を学びたい方々」と直接ふれあいたいと思い、応募をしたのです。

9月は圧倒的にEPA(*)の方が多かったですね。EPAに基づくインドネシア人・フィリピン人・ベトナム人の看護師・介護福祉士候補者。それからミャンマーなどから技能実習生として日本へ来日する予定の方々。

来日されて仕事が始まると、苦労されることも多いと思うので、私との会話の中では何か楽しい話題が提供できればなあと思って話をしています。ある方は、ご自分の国では救急医療の現場で5年間働いていたそうですが、来日したら高齢者施設で介護の現場に入る予定とか。そうなると、また戸惑いも多いかなと思ったりして。

私は、旅が好きで日本全国に足を伸ばしているので、来日予定のある方には、行く先の都道府県を聞いて、できるだけその土地の美味しいものや名所などの情報を案内しようと心がけています。例えば「香川県で働く」だとしたら、実は私の頭の中には、パッと「うどん」が思い浮かぶのですが(笑)、「栗林公園があります。琴電という電車も走っていますよ」と。少しでも日本での生活に楽しみを見つけてもらえるような話題を提供したいと思っているからです。

(*)EPA=経済連携協定:貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定=外務省HPより

留学先のイタリア・ペルージアにて。クラスメイトとホームパーティ


外国の方と話すとき心がけていること

まず私は、この人はどのくらい日本語が話せるのかなと、その人の日本語レベルを伺うことから始めます。相手のプロフィール欄にある日本語レベルを確認してから会話を始めます。第一声で「こんにちは、はじめまして」から3往復ぐらいの会話で、どの程度話せるのかをみて、スムーズに行けそうだったら色々な会話に広げていきます。

ちょっとたどたどしいかなと思ったら、定型パターンにします(笑)。
私は大阪に住んでいるので、「大阪って知っていますか」から始めて、大阪の食べ物の話などをしてから、逆に「あなたの住んでいる町の有名な場所、おいしい食べ物を教えて」と入っていきます。こちらが一方的に話すだけでなく、話すことにもチャレンジしてもらいたいですからね。なるべく「そちらはどうですか」と、質問を振るように意識しています。

定型パターンのやりとりができると、だいたい日本語能力検定のN4くらいかなと判断するわけです。日本語能力試験にはN1〜N5の5つのレベル認定目安があって、一番やさしいレベルがN5、難しいレベルがN1。
プロフィールに「日本語の先生の先生です。日本語のことも聞いてください」と書いているので、日本語が中級以上の方からはちょっとした語彙、表現の使い方の違いといった日本語そのものへの質問もあります。仕事柄、この単語は中級の単語、上級の単語とわかるので、「日本語能力検定試験のN4に受かりました」という方に、「これはN2の単語だけど、ちょっと覚えましょうか」なんて言うと、相手のお目目がキラキラと輝きますね。

それから小さいホワイトボードを準備していて、相手が知らない単語をマーカーで書いて、モニター越しに見せることをしています。
初級レベルの方は、25分の会話の中で少しずつ語彙を増やすことを心がけています。例えば「話しましょう」を、徐々に「会話をしましょう」、「討論してみましょうか」と、ちょっとずつ語彙レベルを上げていくこともしています。

香港の男性で、日本語がかなり話せる方が、コロナの話題から「紙のマスク」とおっしゃったんですね。それを聞いて「あっ、これは不織布という言葉を入れるタイミングだな」と思って、ホワイトボードに「不織布」と書きました。紙のマスクで通じますが、「日本ではみんな不織布のマスクをしていますよ」と「不織布」という言葉を、その後3回ぐらいリピート(笑)。覚えてもらいたい言葉は最低3回、繰り返します。

気づきや学びも多い25分間

イタリアの方と繋がったことがあるんですが、私が20年以上前に留学していた頃住んでいた町が、今は「アニメフェスタ」で有名だと聞いて驚きました。留学当時、日本語を勉強するイタリア人は、ほとんどが日本文学に興味があって川端康成で卒論を書くとか、そんな感じでした。ところが今はアニメから日本に興味を持って、日本語を学ぶ底辺が広がっています。それが全世界的傾向なんだなと思い知らされましたね。私が話した方は大学院生。日本美術史を選択し、卒論の研究テーマは私も知らないような日本の画家さんを選んでいました。でも日本に興味を持つきっかけはアニメだったそうです。

フィレンツェにて。文通相手と初めて対面!

最近は何度もお話しするリピーターの方も何人かできました。もう6回くらい話している中国の女性は、日本語はペラペラレベル。IT関係の仕事をされています。彼女とはいつも平日の夜話しますが、1日の仕事が終わってからですから、疲れている表情で「こんばんは」と小さな声で画面に出てきます。「元気ですか?」と聞くと「体は元気ですが、心は元気ではありません」なんて返ってくる。だから私は、会話時間の25分間を彼女にとって、そして私にとっても癒しの時間にしようと思うわけです。25分が終わった時に彼女が「さよなら~」と元気に手を振ってくれることを目指しておしゃべりします。

一度、彼女がすごく難しい質問をしてきました。11月の初めに東京で電車の中で男が人を刺し、火をつけた事件がありましたね。彼女もその事件をネットニュースで読んでいて、「どう思いますか?」と尋ねてきました。「日本は電車のセキュリティが甘いのではないか。中国ではこうだ」という話もしてくれました。私も普段のニュースに、もっとアンテナを張り巡らしていこうと思いましたね。

普段は接点のない国の方と繋がる面白さ

Sailを利用しなかったら、お話をする機会がないであろう国の方と会話をすることができた点は、すごく良かったですね。あるとき繋がったのが、インドのいわゆるチャラ系のお兄ちゃんだったんです(笑)。今までインドの方と接点はなかったし、見た目や言動が軽い感じの方と喋ったこともなかったし(笑)、新鮮でした。自分が外国の地に行っても、現地の方とお話をする機会は滅多にないので、外国の方と会話ができるというのは貴重な体験です。 
もうひとつ良かったのは、生活のリズムが整ったことです。今は夜9時にSailをひと枠入れようと思っているので、9時までに諸々の用事を済ますようになりました。

仕事でもSailの体験を生かしています。主に文法、音声、言語学の指導を担当しているんですが、教えるときに「昨日ベトナムの方と話をした時には」とか、多少なりとも学習者の話を混ぜた方がリアリティが出てきますからね。

私なりのSailの25分の終わり方があるんですよ。最後終わる時は、必ず笑顔で、必ず元気よく、「じゃ~ね~! さよなら~~!」と言って、思い切り、大きく手を振ります。25分楽しかったなという印象で終わってもらいたいですからね。
これからはリピーターさんだけでなく、色々な方とたくさんお話しして、相手の方の日本語力アップに協力したいですし、日本という国そのものに興味を持ってもらえるようにできればいいなと思っています。

(聞き手・officeSAYA 小出広子) 

 

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