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2021 Dec 17
Sailer Interviews

SailerインタビューVol.23

 

若い人々との交流は幸せなこと、ありがたいこと

里村さん(70代) 奈良県

外国の若い人たちとの関わり

引退以降、ここ10年は主に2つのボランティアを柱に日常生活を送っていました。ひとつは、奈良文化財研究所に所属して、世界遺産に登録されている平城宮跡でのガイド。もうひとつは私が暮らす奈良市に隣接した生駒市で日本に住む外国人への日本語学習支援です。どちらもやりがいがあり、楽しく活動しておりましたが、残念なことにコロナ禍でこうした活動が中止になってしまいました。

3人の子供も巣立っており、今は妻と二人の生活です。趣味のない私ですので、コロナ禍の生活で楽しみが少なくなっていたところ、日本経済新聞の記事でSailと出会うことができました。ぜひ参加させていただきたいと思い、パソコンの操作は不得手ですがトライしましたところ、そう問題もなく外国の方と繋がることができました。パソコン操作が苦手な人間でも、Sailのアプリは操作が比較的わかりやすかったので大変助かりました。
2021年4月からスタートして、今まで70回くらい会話をしました。私がSailの予約を設定するのは昼の時間帯なので、アジアの方がほとんどです。インドネシア、ミャンマー、台湾の方が多いですね。なぜ昼間だけかと言いますと、私の唯一の楽しみが夕食前に日本酒を嗜むこと。なので、夜はできないんです(笑)。若い頃はビールや洋酒を飲んでいましたが、今は、私の体質に合うのか、私は日本人なんだなあと実感しながら、もっぱら日本酒をお燗していただいています。

先日、初めてメキシコの方と繋がったのですが、その方に「なぜ日本に興味を持ちましたか?」と尋ねると「ジンジャから」と。若い方だったので「ニンジャ」と言ったのかなと聞き返したら「神社」でした。「神社はとてもきれいで神秘的だから、神社をきっかけに日本に興味を持った」と。私が「奈良には世界遺産になっている古い神社もたくさんある」と話すと、「コロナが終束したら行ってみたい」と言ってくれました。

また、先日はSailで何回かお話しした方から、「来年7月、日本語能力試験のN1を受験します。勉強の仕方をアドバイスしてもらいたいです」と言われました。ボランティアでN2を目指す方の勉強のお手伝いをしたことはありましたが、N1を目指す方にどうアドバイスをしたらいいのか。

私事ですが、長男の妻はオーストラリア人で、今はオーストラリアのハイスクールで日本文化や日本人とのコミュミケーションというようなことを仕事にしています。彼女は日本にいる時に日本語能力試験N1と日本語教師の資格を取りました。彼女がN1の試験を受ける前にどんな勉強をしたかという話も、以前のSailの方にしたことがあるんですが、そんな話も参考にしながら、上手くアドバイスできるよう勉強を始めました。

Sailは相手の顔を見ながら会話ができるのが良いと思います。もちろん実際に会ってface-to-face(フェイスツーフェイス)に敵うものはないとは思いますが、顔の表情や仕草で話のニュアンス伝えられますからね。私は、10年以上、日本語を勉強する外国人への学習支援のお手伝いをしているのですが、コロナ禍で教室はお休みです。担当していた方の日本語の勉強が中断してしまうのが残念なので、「なるべく日本語で話をしましょう」というつもりで、電話で話しますが、やはり意思の疎通はなかなか上手くいかないものです。


ボランティアの活動と奈良での暮らし

引退前から日本語を勉強する外国人のお手伝いのようなことができないかと考えていたんです。長男は今、オーストラリアに住んでいますが、日本語教師の勉強をしている時期もありました。それから昔新聞で、退職して仕事から自由になった時に、少しでも世の中の役に立ちたいと日本語教師を目指した方の記事を読んだことがあり、その頃からもしかしたら自分にもできるのではないかと思い始めました。

日本語学習支援のボランティアを始めた当時は中国や韓国から来ていた外国人が、仕事のために日本語が必要だからと教室に参加されていました。それが7〜8年前くらいからは、ほとんどが国立の奈良先端科学技術大学院大学へ留学してきた学生になりました。彼らは将来国を背負って立つ人材で、ドクターを目指して日本へ留学している人たちです。すでに英語は堪能、その上で日本語の勉強をしています。
彼らはカップルで、または子供も一緒に、ファミリーで来日されて大学で学んでいるケースが多いようです。私は、指導をした学生さんが帰国する前に、必ず我が家へ招待するようにしています。ほんのひとときでも日本のごく普通の人の生活、日本の食生活に触れてから帰国して欲しいからです。天ぷらやすき焼きなど、彼らが希望する料理を聞いて妻に作ってもらいます。日本を好きになって帰ってもらえれば嬉しいという気持ちでやっていました。

私はもともと転勤族で、父も祖父も転勤族でした。ですから、あっちこっちへ転居して、船のSailor(船員)ではないですが、ずっと旅人のような生活をしてきました。故郷を持たない生活を続けてきて、人生の中で自分の意志でここに住みたいと決めたのが奈良です。50歳で奈良市に居を定めました。妻は東京育ちなので、奈良に住むことは渋々了解してくれたのかもしれません。結婚を申し込む時と同じくらいの熱心さで、奈良に住むことを妻にお願いしました(笑)。

若い頃、最初の転勤で東京から大阪勤務になった時に、休日によく奈良を訪ねていたんです。私は読書が好きで、昔の本ですが、和辻哲郎氏の『古寺巡礼』(岩波文庫)や亀井勝一郎氏の『大和古寺風物誌』(新潮文庫)など、古き良き日本の文化を記した本が愛読書だったということもあり、そのような本をバイブルとして奈良を歩きました。それが奈良を気にいったきっかけです。仕事等で長く、追い立てられるような生活をしてきたという思いがあって、歳をとったら心穏やかに静かに生きていきたいと。それで奈良での暮らしを選びました。

Sailで繋がる外国の方に自分が住んでいる場所を説明する時は、「奈良は京都や大阪の隣りです」と言うと大体位置をわかってもらえます。それから東京の前に日本の首都だったのが京都ということも多くの方は知っています。そこで、「京都の前に日本の首都があったのが奈良です」と話すと、奈良に関心を持ってくれます。

 

      日本の人向けのSailコミュニティ"喫茶るんるん"にて

S.I.M Sailerとして登録して

9月にS.I.M(ソーシャル・インパクト・メンバー)という新たなメンバーシップに登録しました。もともと「分断のない活力のある社会を創る」というSailを運営する株式会社Helte設立の理念に共感してSailを使っていました。加えて有料のS.I.M Sailerメンバーシップを新たに創設するとき、収益の一部が世界中の信頼のおける日本に関わりのある教育機関に寄付されるという説明にも共感したからです。
今後、S.I.M Sailerのことが社会に広く認知されるよう期待しています。

日本語はどちらかというと世界の中ではマイナーな言語だと思います。そんな中、Sailに参加している外国人は日本語や日本文化や日本の良さに興味を持ってくれています。しかも若い人が多い。そういう方々と交流できるのがsailの魅力です。自分にとって幸せなことで、ありがたいという感じがしていますね。

 

(聞き手・officeSAYA 小出広子) 

 

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