Helte History -Episode4/5
「会社を立ち上げてから」
Helte 後藤 学
結果が出ない日々と(株)カヤックとの出会い
結果が出せず、光の見えない日々
2016年3月に登記し、一緒に仕事をしたい仲間が3人いたので、お金の目処がついた時点で声をかけ、会社に入ってもらいました。事業モデルを固めて動き始めたのは5月でした。
海外の人と日本のシニアを繋ぐシステムを作ることが急務だったので、一人が内製でシステム開発を、僕ともう一人が海外側の教育機関を開拓すべくタイの大学をまわり、もう一人は国内の高齢者住宅をまわって事業内容の説明を担当しました。
システムを作っても、参加者がいなくては話になりません。タイ・バンコクでは、なんのツテもコネクションもないまま、日本語学科を設けている大学を探してアポイントメントなしで飛び込みました。なかなか会ってもらえません。再度手土産持参で訪問してもダメ。国内の高齢者施設でも門前払いばかり。今までにない新しい事業なので簡単には理解されず、僕も、皆もなかなか結果を出せずにいました。
「今日もダメだった。 誰も相手にしてくれない」と、4人で落ち込みながら会社でディスカッション。光が見えない毎日を送りましたが、クロードさんからの出資で、スタートアップ企業でありながらそれぞれが生活はできていたので、皆、本当に粘り強く頑張れました。
上場企業がバックについてくれた
この事業が陽の目を見るきっかけになったのは、もがき続けて1年半が経った頃です。事業を模索しながらも6ヶ月のアクセラレータープログラムに参加していました。アクセラレータープログラムとは、「短期間で事業を成長(スケール)させるためのプログラム」で、ベンチャー企業や中小企業を対象に、アクセラレーターと呼ばれる支援者との定期的な面談を通して、事業アイデアや新規ビジネスの検証・精査(ブラッシュアップ)を行っていく伴走型の支援(ハンズオン支援)です。
そのプログラムの中間発表で、2017年11月にマザーズや東証一部に上場している社長さんたち5~6人にプレゼンテーションをする機会がありました。異文化への交流のためには例え泥沼を進むことになっても出航したいという思いを込めて「Sail」という名のシステムが、よちよち歩きではありましたが稼働し始めていました。しかし、実績は「Sail」を使っての会話が週15会話ほどしかなく、システムも手作り感満載で、まだまだ完成形には程遠く、事業のタネを蒔いたばかりという状態でのプレゼンでした。
「“Sail”は、日本語を話せるようになりたい、将来日本で就労したいと願う世界の人と、国内の人生の達人であるシニアをつなぎたいという思いでスタートしました。日本のシニアが、世界で日本と接点を持ちたい人々とつながり、日本の文化や歴史、経験や知恵を伝え合うサービスです」
この頃は、今と違って「Sail」は異文化交流よりも、日本語教育という側面が濃い内容でした。限られた時間内にそのように事業内容をプレゼンし終わると、今もお世話になっている株式会社カヤックの柳澤大輔社長が「面白い。いけるよ」と言ってくれたのです。この言葉は今でも耳に残っています。「やっと報われた」と嬉しさが溢れました。
そこから半年くらいカヤックと協議。上場企業との交渉は初めてでしたから、ハードな経験でしたが、業務・資本提供をしていただけることとなったのです。
クロードさんもずっとサポートしてくれていたましたが、海外にいる投資家なので、日本でのバックアップはなかなか難しい状態だっただけに、カヤックという上場企業がバックに着いてくれたことは大きかったです。今まで門前払いだった人も話を聞いてくれるようになり、明らかに状況がいい方向に変化したと感じました。
新しいアプリをリリースして
ビジネスモデルの限界が見えてきた
カヤックとの共同開発で、2018 年10月末に「Sail」の新しいアプリケーションを導入、正式リリースすることができました。それまでは事業と言っても手を伸ばしているのに届かない夢物語のような段階だったものが、やっと現実になりました。どこに出しても恥ずかしくない性能のアプリが出来上がり、それを携帯で操作してみて「本当にスタートするのだ」と実感しました。会社を辞めてから3年6ヶ月が経っていました。
ただし、この頃になると、国内の高齢者住宅と海外の学校との連携が、ビジネスモデルとしては難しいなと感じることが多くなっていました。
理由の一つは、町のデイサービスや高齢者住宅の多くは介護保険で成り立っているので、魅力は感じていただいたとしても資金に余裕がなく、追加のサービスにお金を払う体力がなかったということ。もう一つは現場の人手不足で、導入はできても継続率が良くないのです。
高齢者住宅の役員やマネージャーは、外国人学生とつながっておけば、将来その人たちが日本に介護の仕事を求めてきたときに採用にも使えるとか、介護の現場の人たちが使えば国際化にも役立ち、外国人の介護士の受け入れに繋がると、将来のことを見据えてビジョンを描きます。でも、実際の現場が忙し過ぎて、エンドユーザーであるシニアの人が使えないのです。
ユーザーの人数が思ったようには増えず、2019年4月に再度、カヤックから出資を受け、システムのアップデート。そこからさらに4ヶ月間、今までのビジネスモデルでチャレンジし続けましたがうまくいきませんでした。
秋になって、再び今度はまたお金がない状態に。そして資金調達に動きました。
とにかく投資家を見つけたい
まず、赤羽雄二さんにメールを出しました。赤羽さんは、マッキンゼーで活躍した方で、ベンチャー共同創業と大企業の経営改革の支援に取り組んでおり、著書も多数。赤羽さんと繋いでくれる知り合いはいませんでしたが、とにかくメールを送りました。事業への思いの丈を綴った長文のメールです。熱意だけの文章だったと思います。
赤羽さんから届いたのは、「弊社はこのような出資はしておりませんので、あいにくお手伝いはできません」との返事。次にいくしかないと思いました。返信をくれたことへの感謝を綴りメールを送ると、「資本政策のアドバイスはできると思います」と返信が。
当時は、とにかく出資を受けることが最優先。1日でも早く投資家に出会うために、ひたすらメールを送っては可能性があるところに足を運ぶ。その繰り返しでした。
出資を受けられるところにのみ行こうと考えていましたが、資本政策は会社の将来にも関わる繊細な作業でもあるので、経営のプロフェッショナルである赤羽さんに直接アドバイスをいただける機会は貴重だと考え、浜松町の赤羽さんのオフィスまで会いに行きました。
30分1本勝負という気持ちでぶつかっていくと、赤羽さんから次々質問が飛んできて、ひとつひとつの質問に対して全力で打ち返していきました。そして、次の面談、また次の面談につながり、思いがけず、赤羽さんから「この事業は、日本語の勉強とか国際交流だけにとどまらない。外国人から日本を好きになってもらう機会になる。日本を好きな外国人が増えることは日本の社会にとってもいいことだ。民間同士の理解が深まることは世界平和に繋がる」との言葉をいただきました。僕たちの事業を認めてもらえたことが誇らしく、改めて海外と日本を結ぶ意義のある事業を展開していくという思いを強くしたものです。
初めてのメールから1ヶ月くらい経った頃、60通以上のやりとりがあったでしょうか、
対面でも細かく事業のことを聞かれ、何回も交渉をした上で、出資が決まりました。奇跡だと思いました。
2020年の躍進を経て
日本人と外国人の相互理解のための「Sail」へ
2020年1月から、「Sail」のコンセプトを双方向の交流にシフトしました。シニアが日本語を教える、外国人(世界の人)が日本語を学ぶというスキームでやってきましたが、教える、学ぶというスタンスだと本当の意味での相互理解は促進できないと思いました。双方のユーザーは、あくまでも対等な立場。シニアも世界のユーザーから色々なことを学んでいるということに、この時期に気付いたからです。
国内のユーザーのターゲットを在宅のアクティブシニアに変更し、外国人も日本語を学びたい人だけでなく、日本に興味のある人へと広げました。
海外でも大学だけでなく、個人にもアプローチするためにネット広告も出しました。東南アジアには技能実習生を育成している機関がいくつもありますが、そこと提携している人材会社と代理店契約を結び、その人材会社が繋がっている機関に200〜300アカウントを買い取ってもらうこともしました。国内では国際交流団体などの紹介もあり、次第に参加者の数字が増え、会話数が増えていきました。会話数が増えると新聞、雑誌、テレビといったメディアで取り上げられるようになり、一気に認知度が高まったのです。
そんなときにコロナ禍です。僕たちの事業「Sail」はどうなるのだろうと不安に感じていましたが、在宅の方々が増え、一気にICT(情報通信技術)が注目されたタイミングで、この時期にぴったりのアプリだとメディアで紹介されたのです。すると海外に行きたくても行けない方、海外に興味のある方が異文化体験を求めて、続々と加入してくれました。
「Sail」は、旅の醍醐味にも似た体験ができます。また、リアルに人と会うことがままならないとき、家で孤独を感じるときにも、「Sail」を通じて人と繋がることができるので、こうした点が人々をひきつけたのではないでしょうか。
公的機関の導入で信頼度も増す
2020年6月に、「Sail」は神戸市が推進する「STOP COVID-19 ×#Technology」プロジェクトに取り入れられ、8月には神奈川県が推進する「新しい生活様式におけるコミュニティ再生・活性化モデル事業」として導入されました。公的機関が導入してくれたことで、ありがたい出資の話も受けることができました。
2020年のこの年は、「Sail」参加者が一気に増加しましたが、そんなときだからこそ、「分断のない活力のある社会を創るために、この国際交流を広げていこう。そのために僕はスタートしたのだ」という軸がブレないように、常に自分自身に言い聞かせていました。
「自分は人としてどう生きたいのか。なぜ僕はこの事業をやっていて、どこへ行きたいのか」という問い掛けは常に続けています。この事業には多くの人たちが応援、協力してくれていますが、最終的には、代表である僕自身の人間性が大事なのだと思っています。僕の思いに共感するだけでなく、目には見えない僕の内面を感じ取って「この若者に掛けてみたい」と感じてもらえないと、リスクある出資や協力はしてはくれないだろうと思うからです。
>>Episode5/5へつづく
(聞き手・officeSAYA 小出広子)
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