SailerインタビューVol.6
世界へ窓が開かれた
金子さん(70代)神奈川県
今はコロナ禍でお休み中ですが、6年ほど前から神奈川県藤沢市の江の島観光案内所で外国語観光ボランティアをしています。江の島に来られた海外の方に地図をお配りしてご案内をしたり、おすすめ観光スポットをご案内したりします。子供のころに、父の仕事の関係で、3年半ほどニューヨークで暮らした経験があり、英語は話せるんです。
江の島にはさまざまな国の方がお見えになります。ただ、ご一緒してガイドするというより、道案内など二言三言の会話で終わってしまうことが多いのです。遠くの国からせっかくいらしていただいた方々と、もっとお話しできたらいいなと、いつも思っていました。
そんな時、オリンピック・パラリンピックボランティアの登録をしていた地元藤沢市からSailのご案内をいただきました。海外の若者と自宅にいてお話できるなんて楽しそう、と昨年9月の説明会に参加して早速登録しました。苦手なパソコン操作にも乗り遅れちゃいけないと思い、この機会にオンラインの交流に挑戦してみようと思ったんです。
最初の会話のお相手は、介護職を目指して日本語を勉強しているミャンマーの女性でした。私は8年ほど前に観光でミャンマーに行ったことがありました。金ぴかの寺院が街のあちこちにあって、人々の生活の中に祈りが根付いているんだなあと感じたことや、ミャンマーの麺料理モヒンガーとビールがとてもおいしかったことなどを夢中でお話しました。話しているうちに自然豊かなミャンマーの土の香りや空気が部屋に入ってきたように感じて、まるでまたミャンマーにいるような不思議な気分になりました。
旅行で滞在中、現地の方と会話する機会はあまりありませんでしたので、ああ、あの時もこういう方々が暮らしていたんだなあと実感が湧いてきました。自宅にいてこんな感覚を味わえるなんてSailならではですね。
ピアノ教師をしていたこともあって、メキシコの女性とお話した時は、音楽の話で盛り上がりました。私がニューヨークの小学校に通っていた頃に覚えたメキシコ民謡の「シェリト・リンド」を一緒に歌ったり、メキシコでは皆ダンスが大好きで、「結婚式ではみんなで夜通し踊るんですよ」と聞いて、へ~楽しそうと驚いたり。会話で何十年も前の記憶がよみがえったり、新しい発見があったり、とても楽しいです。
ベトナムの方とお話した時は、旅行で現地に行った際、ひっきりなしにバイクや車が行き交っていて道路を横断するのがこわかったことを思い出し、事故はないんですかと聞いたら、「ありますよ。でもいちいち警察なんか呼ばないし自分たちで解決しちゃいます。壊れた車もだいたい自分で修理します」と言われて、びっくりしました(笑)。
自然体の出会いが楽しみ
平日の夜と週末の午後、週に3回ほど会話の予約を入れます。いろいろな方との出会いがとても楽しみです。海外に旅行したこともありますが、現地の方とはちょっとしたやりとりはあっても、お話できる機会というのは意外にないものです。ましてお宅にうかがってお話しするなんて考えられません。でもSailって、それがオンラインで自宅からできてしまうんですから素敵なことですね。
会話の相手が決まりその方の国のことを、地図を広げて調べていると、その国を旅行しているような気分になってきます。相手の方に今の季節なら日本のこんな行事についてお話してみようと思えば、うろ覚えのことを調べ直して確認したり、どう話したらうまくお伝えできるか考えたり。Sailを始めてから日々の生活の中にそんな視点が生まれ、自分もとても勉強になっています。
コロナ禍でいろいろな活動ができなくなりさびしく思っていましたが、Sailに出会って、それまで閉じていた窓が世界に向かって開かれたように感じています。遠い国々の皆さんなのに、会話しているとまるで近くにいらっしゃる方のように親しみがわいてきます。世界中のいろいろな方と、これからも自然体の出会いを楽しんでいけたらいいですね。
(聞き手・ジャーナリスト橋本節夫)
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