Journal

2021 Jul 07
Sailer Interviews

SailerインタビューVol.18

置かれた環境で自分に出来ることを!

岡田さん(60代) 兵庫県

新しい趣味を見つけてセカンドステージも謳歌 

海外の文化や音楽が好きだった両親の影響で、子供の頃から、海の向こうに強い憧れを抱いていました。殊に母はとても洋楽が好きで、ポピュラー、映画音楽、ジャズなど、よく聴いていましたね。 その頃、父が電気店を営んでいまして、いわゆる昔の「町の電気屋さん」ですから、電化製品だけでなく、レコードや楽器も扱っていたんです。身近にリスニング・ルームもあり、いつでも心ゆくまでレコードを聴ける、そういう環境も影響していたと思います。とにかく小学校高学年から洋楽ばかり聴いていました。そして、どんどん異国の地を憧憬する気持ちが高まっていきました。 仕事は、初めて就職してから44年間、ずっとファーストフード関係です。60歳で定年退職。 その後、嘱託として同じ職場に残り、週に3~4回のペースで続けていましたが、昨年末、完璧に業務を離れました。 4年前に脳梗塞を患って1カ月くらい入院生活を余儀なくされ、それ以来、無理をせずにのんびり生きようと思うようになったんです。 そんなこともあって、60歳を過ぎてから新たな趣味も始めました。 それはスティールパンという、ドラム缶から作られた鍵盤打楽器です。誕生は、トリニダード・トバゴ共和国という、カリブ海の南端に浮かぶ島。「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器」とも言われていて、無骨な見た目とは裏腹に、音色は透明感があり、とても繊細で美しいんです。 国内にもスティールパンを中心に活動しているバンドとかオーケストラが、結構あるんですよ。私は、自分の出身地である名古屋のオーケストラに参加しているのですが、ここ1年くらいは行けずにいます。コロナ禍以前は月に2~3回、神戸から名古屋まで練習に通っていたんですけどね。早くコロナが収束することを願うばかりです。

2019年、スティールパン・オーケストラ「PANSONIDO」の単独ライブ。 名古屋のライブハウスにて

一つの歯車となってSailを応援したい

Sailとの出会いは昨年の9月頃。KICC(神戸国際協力交流センター)のホームページを見ていて、たまたまSailの記事を見つけたんです。「海外の人と話せる。しかも日本語で……。これはいい!」と思ってすぐに申し込みました。 今まで会話したのは50回ほど。いつも最初から会話の内容などは決めず、できるだけ相手の話に、こちらが合わせていくようにしています。あとは温泉などの旅先で出会ったような感じで、フランクに接することを心がけています。 自分が知っていることは出来るだけ教えてあげたい。でも時間が限られていますから、時には、相手の方が考えたり、調べたりするのに役立ちそうなヒントを授けるのもいいんじゃないかと思っています。 例えば、介護職を目指しているミャンマーの女性から、「痛みの伝え方」について相談を受けたことがありました。痛みは感覚的なものですから、日本人同士でも伝えるのが難しいですよね。それで、日本語ではズキズキ、ガンガン、キリキリなど、オノマトペで表現することが多いのだと伝えました。こんな風に「物事の状態を表す擬態語」があることがわかれば、あとは自分で調べ、知識を増やしていけると思うのです。 逆に、こちらがもっと勉強しなければと思うこともあります。自分は洋楽ばかり聴いていたので日本のポップスなど邦楽のことをよく知りません。又、歌舞伎や落語など日本の古典芸能に興味を持っている方が大勢いらっしゃいますから、それらの知識も深めていきたいと。 Sailでさらに会話を楽しむために勉強する、これは相手の方はもとより、自分にとってもすごくプラスになることだと思っています。

誰かを励ますことで自分も元気に

会話の中で神戸のことが話題に上ることも間々あります。町の魅力について訊かれることも多いのですが、25年前の阪神・淡路大震災に関心を持っている方も少なくありません。 当時、長田区にあった職場は壊滅状態。駅前商店街は一面、焼け野原と化してしまいました。 そんな中、被災者同士、全国から駆けつけてくださったボランティアの方々など、皆で支え合いながら、人と人とのつながりや有り難味を痛感。街並みや人々の心、都市の機能など大きなダメージをもたらしましたが、あの震災を通して多くの学びがあり、私自身も生き方や価値観が大きく変化したように思います。 今年はコロナ禍で中止になりましたけど、4年前から神戸マラソンに出場するランナーを沿道で応援しています。 スティールパンの演奏で盛り上げたこともありますし、甲冑姿で声援を送ったことも。 実は、コースの中に「一の谷」(須磨区)という地点があるのですが、ここは平安末期に源平合戦の舞台となったところ。そこで武将の扮装をして応援しようという神戸市の企画があり、私は「一の谷の合戦」で熊谷直実に討たれ、16歳で命を落とした平敦盛を演じさせていただきました。

2017年、神戸マラソンで平敦盛に扮してランナーを応援

誰かを応援することで自分が励まされたり、元気になることってありますよね。 私は名古屋出身で、神戸に来てちょうど30年になります。いずれ故郷に帰りたいという気持ちもありますが、今はとにかく置かれた環境で、自分に出来ることを精いっぱい頑張りたい。 神戸は昔から外国の方が多い町ですから、皆さんが快適に暮らしたり、働いたりできるよう、神戸市が取り組んでいる国際協力交流などの活動にも参加していきたいです。 そしてSailを通じて知り合った方や、これから出会う方々のお役に立てることがあれば喜んでやっていきたいと思っています。

(聞き手・ライター 松井京子)


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