Journal

2021 May 19
Sailer Interviews

Sailer インタビューVol.15

「楽しい!」が続く秘訣

中林さん(70代) 東京都

外国の方と出会う機会がない日常から

Sailは離れて暮らす娘から勧められて始めました。昨年(2020年)の7月頃のことです。私は現在、夫と二人暮らしです。7年前に定年退職してからは趣味を楽しんだり、離れて暮らす娘の家に通って孫の面倒をみたりという生活を送っていました。

一昨年(2019年)は夫が病気になり、2回も手術をするという大変な時期でもありましたが、無事に退院して「やっと家で普通の生活ができるようになったね」と話していた矢先に、コロナで自粛生活になってしまったんです。孫とは会えない、趣味の会にも出かけられない。外出せずに家にいたので、鬱々とした毎日でした。そんな私のことを心配して、娘が勧めてくれたわけです。

夫婦で朗読会に参加

娘はSailのことを、テレビで見て知ったようです。「歳をとった方もやっているようだから、お母さんもやってみたらいいんじゃない?」と。最初は躊躇しました。私は趣味で朗読や短歌をたしなんでいたので、どちらかというと日本的なものへの興味が強かったんです。普段の生活で外国の方と触れ合う機会もなかったですし、海外旅行も韓国とハワイに行ったくらい。けれど、「日本語で話せばいいから」と言われて、まずはちょっとだけ体験してみようかしらと思って、申し込んでみました。

最初につながった方は、シンガポールの男性の方。大丈夫かしらとドキドキしながらスタートを待っていました。でも、会話が始まると、その方は日本語が堪能で、日本のことも良く知っていたんです。会話がスムーズに流れて、「あっ、こういうことでいいのね」と、ほっとしました。それですぐ次の予約を入れました(笑)。

私が予約を入れる時間帯は、午後2時から5時頃までがほとんどで、その時間帯はアジアの方、国名で言うとミャンマーやベトナムの若い方が多いですね。家にいるだけだと若い方と接する機会がほとんどないので、海外の若い方と話をするのが楽しくて(笑)。

皆さん、日本語をうまく使えるようになりたい、日本のことを知りたい、日本で働きたいと一生懸命です。日本で介護の仕事をしたいという方もけっこういらっしゃる。あるとき「介護の仕事をするのに何か心配なことがありますか?」と聞いてみました。すると「日本で働くときに、日本のお年寄りが自分のことをどう思うか心配です」と言うんです。「あなたの笑顔で接したら大丈夫よ」とか「お年寄りはきっとこんな気持ちでいるはずよ」と、そういうちょっとしたアドバイスをしたことはありますね。

もちろん、つながる先のお相手の国のことも知っておきたいと思います。ネットを使って調べたりしているうちに、「あー、あの国はこうなんだな」と興味も湧いてきました。

視野が広がり、孫との会話も増える

Sailを始める前は、本を選ぶにしても、朗読するのに適しているかなという視点で小説やエッセイを手にしていました。でも、今は海外のことも知りたいので、選ぶ本のジャンルの幅が広がりました。本選びだけではなく、生活の幅が広がったと思います。テレビのニュースも、以前は海外の話題を遠い国の出来事として見ていましたが、それがリアルになりました。「こういうことがあるのね」とか、「今度、その国の方と話すことがあったらこのニュースのことを聞いてみようかしら」と思いながら見るようになりました。

実はSailで海外の方と交流するようになって、小学生の孫との会話も話題が増えました。前は電話をしても「どうしている? 元気?」くらいだったのが、今では「今日はどこどこの国の人とこんな話をしたのよ」と、外国のことも話題にするので孫も私とおしゃべりを楽しんでくれているようです。テレビや Webで得た知識ではなく、実際に会話した異文化の話ですから面白いのでしょうね。私が話題にする国の場所を孫が地図で調べたりしているそうです。

現役時代は仕事漬けだった夫も今は家庭的に

私自身は趣味の朗読をするときは、美しい日本語を話すことを意識はしていますが、Sailでの会話はいたって普通の言葉遣いですよ(笑)。ただ、Sailは一対一ですから私自身を見てもらうという側面がありますよね。無理をせず、私自身が培ってきた経験や生活で得たものをそのまま伝えて交流できればいいのかなと思います。

娘さんが小さい頃、近所のお祭りへ

私は結婚後、娘が小学2年生になるまで専業主婦でした。時代は高度成長期で夫はいわゆるモーレツ社員。家庭を顧みず会社に尽くす(笑)。朝7時に家を出たら帰宅は夜中の1時、2時という毎日。もちろん土日もなく働いていました。子育ても家事も何も手伝ってもらえなかったですね。私は日々、家で娘と向き合う生活で、「このままでは娘にばっかり目がいってしまう。それは娘のためにも、私のためにもよくない」という思いもあって仕事を始めたんです。   

夫は今、どちらかというと家庭的で家事もよくやってくれますし、私の活動にも協力的です。「今日は何時からSailだろ」と気にかけてくれて、ニュースを見ていても、私がつながったことのある国の話題だと一緒に熱心に見ています。

Sailをやっていると、海外の若い方のお役に立てたらと強く思いますね。どうお役に立てるかわかりませんが、私自身、交流が楽しいから続くんです。長く続けていきたいですね。海外のことを本当に知らなかった私でもSailを通して海外の方とつながることができる。だから、一人でも多くの日本の方にSailで国際交流を勧めたいですね。

(聞き手・officeSAYA  小出広子) 

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